クーニャやムベウモの“3倍”走れない? ラッシュフォード帰還がユナイテッドにもたらす戦術的ジレンマ

ANALYSIS(分析)

総括

マーカス・ラッシュフォードが来シーズンのマンチェスター・ユナイテッドで「活躍できるか」という問いに対する結論は、彼自身がこれまでの「エースとしての特権意識」を捨て、キャリック体制が構築した高度に組織化された歯車の一部として機能することを許容できるかという一点に集約される。   

定量的なデータが示す通り、ラッシュフォードは守備時に自発的にボールを奪いに行く戦闘力は有していないものの、パスカットや高い位置での限定的なチェイシングといった「組織に組み込まれた受動的守備」であれば、一定の戦術的タスクをこなすことが可能である。しかし、左サイドで先発起用された場合、マテウス・クーニャやブライアン・ムベウモが提供する守備アクション数(タックル・リカバリー・インターセプト)やスタミナ、インテンシティの基準には遠く及ばない。   

ユナイテッドが彼を来シーズンの戦力として最大限に活かすためには、以下の2つの戦術的アプローチが必要となる。

  • アシンメトリー(非対称)構造における限定的先発: ラッシュフォードを左ウイングで先発させる場合、右ウイングにムベウモ、右インサイドハーフにアマドなどの走力に極めて長けた選手を配置し、非保持時に彼らが中央から左側へのスライド守備を担当して、ラッシュフォードのプレスバック不足をカバーする非対称システムを採用する。これにより、ラッシュフォードは守備の負担を減らしつつ、トランジション時の最大の武器として機能することが可能となる。   
  • スーパーサブ(トランジション・チェンジャー)への役割移行: ラッシュフォードがバルセロナで記録した「途中出場からの驚異的な得点・アシスト効率(1ゴール/アシストあたり約91分)」をユナイテッドでも再現させる。試合後半、相手ディフェンダーのスタミナが低下し、ピッチ上にスペースが生まれる時間帯にラッシュフォードを投入することで、彼の守備的な脆弱性を極小化しつつ、最大の強みである爆発的なスピード(ラ・リーガ平均最速34.16 km/h)と正確なフィニッシュ能力を最も効率的に抽出することができる。   

ラッシュフォードの能力自体は依然としてプレミアリーグ最高峰の基準に位置しているものの、現在のユナイテッドのFW陣に求められる「戦術的忠誠心と高い守備強度」という文脈においては、彼はレギュラーとして君臨するには多くの課題を抱えている。キャリック監督が彼の「補完的な守備能力」を戦術的妥協(トレードオフ)の中でどのようにマネジメントするかが、ユナイテッドが再びタイトルを争う集団へと進化するための試金石となる。   

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